企業研究 − 情報ファイル

5.独立採算・事業部制を解剖する。誰もが育つ・人材育成のカギ

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1銭、2銭の差が企業の将来を決める。高度成長期の真っ直中で誰もが次代を予見しなかった

●当時社長であった関頼次は流通の本家アメリカへ、たび重なる研修に出向いていた。日本は高度経済成長の真っ直中であった。
当時、日本の企業はいわゆる「どんぶり勘定」的経営で経費管理のレベルは低く、社員のコスト意識も低かった。また、放漫経営による倒産はよくある光景で、経済成長による利益の自然増収に頼っていた。
  電化による生活様式の一変。企業は次々に現れるビジネスチャンスに驚喜し、急成長し、誰の目にもこのまま永遠に発展が続くものと錯覚し、夢の中にいた。
●日々大量の受注と売上増・利益増の右肩上がりに狂乱していた。稚拙な経営手法であっても売上増で解決がついていた。
そこには、原価計算により「必要なものは残し、不必要なものは排除する」線引きの明確さが欠け、利益が出ていると思われる商品であっても、人的経費や設備経費を差し引くと赤字であることも見逃されていたのだ。
●このさ中、1968年に独立採算・事業部制が導入されたのだ。高度経済成長は既に、次の段階にさしかかろうとしていた頃だった。
  急激に発達する交通網の整備と車社会の到来で、爆発的に増大するモノの流通。そして事業エリアのさらなる拡大を、関頼次はイメ−ジしたのである。ビッグビジネスの到来。
  同時に、単価が1銭違う商品であっても、扱い数量が桁違いに増大すれば、通年で何百万円の差が出る。その差が、企業力の差として自然淘汰の地獄に突き落とされる時代でもあることを悟っていた。
●そこで、大量の物資を流通させる体制はどうあるべきか試行する。が、しかし関頼次の問題意識はそれだけではなかった。

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厳密な原価計算をベ−スに社員が経営参加意識をもつ。戦略的経営システムが始動

●流通の本家アメリカの「経営工学」を将来の姿としてイメ−ジしていた。
そこには、厳密な原価(経費)計算に基づいた戦略的経営手法があった。この点に気づき、社員自らが経費換算し経営参加意識を高め、戦略的営業展開を可能とするシステムである。
●また、企業は利益をあげることと同時に、社員の労働に対して適正な報酬を補償しなければならない。
そのためには、一部の経営者がソロバンをはじき、利益を出すよう社員に押し付けるのでは、いつかは限界がくると見通していた。
そこで、末端の社員が自分の経費状況や利益状況を手にすることができ、社員自ら不必要な経費の削減をし利益を確保する。
また、将来のために必要な経費は、無駄に使うことのないよう自己管理ができるようにする。
●それに加え、「社員持株制度」の導入により、社員の「経営参加」と「高い次元の利益配分」を可能とさせた。
  社員は従業員でありながら「出資者」でもあり、会社の業績に連動して利益の一部が配分される制度である。すなわち、株主社員は会社の利益が自分の利益に結びつき、コスト意識の向上を一層喚起させるシステムだ。
  独立採算の事業部制と社員持株制は、「社員の意識改革」もねらったものだった。

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スピード感あふれる意志決定システム。ボトムアップで人は育つが危険な賭けでもあった

●次に、意志決定機能の分散システムを解剖してみよう。
流通業界は状況がたえず変化する。この各種変化への対応に際して、上部機関の判断を待っていては、実行のタイミングを逸する。
この「判断=意志決定」機能がそれぞれの現場にあり、素早いジャジメントが可能であれば、時間と人的経費の削減がはかられる。しかしそれ以上に、ビッグビジネスをものにするチャンスも広がるからだ。
●各事業部が独自に高度な経営判断や意志決定ができるよう、売上・利益予算や決算書を作成するボトムアップ方式がカギである。
本部は、各部が立てた目標設定にはいっさい口をはさまない。しかし、経費計算は厳しくチェックし、事業部の経営がスム−ズに運営されるようサポ−トするシステムだ。
●各部では、それぞれの商品が次年度にどの程度売り上げが見込まれるかを予測し、売上予定(目標とかノルマではない)を出す。
また、売上増にかかる経費も算出し、利益予想状況も出す。1つの独立した企業そのものである。時間経費を要する作業である。しかし、コスト意識や時間経費への管理意識が末端にまで高まり、結果的に余計な経費を削減すると同時に、人材が育つのである。

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